Megurdi物理学1 線形性をもつ運動

ここに運動をする点があるとする。この点の上にくっついて、もう一つの点が(前者の点に相対して)静止していたとすると、後者の点は前者の点と等しい運動をしていると言える。前者の点の運動の様子を  A 、静止の様子を、後者の点による運動の様子の一種だとみて  O と示すと、上の主張は


 A + O = A

と表すことが出来る。すなわち二項演算  + を、第1項で表す運動をする点に相対して、その上に第2項で表す運動をする点があったとき、第1項の運動を計った時と同じ基準(絶対の基準とする)で見て第2項の運動の様子を返す演算子とする。

また、ここに運動する点があるとする。このとき、この点に相対して逆の運動をすることによって、絶対して静止する点がありえる。すなわち、


 \exists B, \space A + B = O

この  B A に対して唯一に定まるので、  -A と表記することにする。このほかに、運動の様子  A, B, C は次を満たす。

  •  A + B = B + A
  •  A + (B + C) = (A + B) + C

また、ここに運動の様子  A があるとして、 A の上にさらに重ねて  A の運動をする運動が考えられる。この重ねた回数を  n 回だとして、


 A + A + \cdots + A = nA

と表すこととする。この自然数の係数  n を自然な拡張によって実数係数  a, b として考えることができる。このとき、運動  A, B について

  •  a(A+B) = aA + aB
  •  (a+b)A = aA + bA
  •  a(bA) = (ab)A
  •  1A = A

が成り立つ。

これまでに述べた諸題が成り立つことにより、運動の様子全ては、実数体上の線形空間であると言われる。個々の運動の様子はベクトルであると言われる。