電磁気学18 Diracのデルタ関数

前回は  r \neq 0 において、n次元で


 \begin{align}
\Delta \left( \frac{1}{r} \right) = \frac{3-n}{r^2}
\end{align}

とくに大抵の人間が棲んでいる3次元空間では、


\begin{align}
\Delta \left( \frac{1}{r} \right) = 0
\end{align}

を示した。

今回なにがやりたいかというと、これの0を含むやつであります。
その前に、どういう意図でこの  1/r というのをやっているかというと、点電荷のポテンシャルを考えたいということなんですよ。点電荷って、点な訳で、体積がないということで、現実的な存在ではないんですね、ええ。現実じゃないということは、理想と言うことで(論理の飛躍)、実際、世の中の現実の電荷分布は、点電荷めいたものを足し合わせるという発想で捉えるわけです。だからここで  1/r をやってるんです。

さて、本題。この  r=0 の点は、数学的にきもい点で、扱いづらいのですが、幸い、世の中には「性格は顔に表れる」という有名な理論があります(これを「カオス理論」というんですが)。内面は外に表れるのです。つまり、 r=0 を中心とするような球  V(半径は  R とでもしておこう)を考えて、その球面を見れば、原点がどうなってるのかも分かる、ということです。

真面目な話、各点での湧き出しを空間全体で足し合わせると、

  • 私の湧き出しをあなたが吸い込み、
  • あなたの湧き出しは彼が吸い込む

という感じで、表面以外では足してしまえばプラマイ0になるので、表面での外向き成分(すなわち  \hat{\mathbf{r}} 成分)を合計すれば全体の湧き出しになり申し候。数式では、


\begin{align}
\iiint_V \nabla \cdot \left( \nabla \frac{1}{r} \right) dV = \iint_{\partial V} \left( \nabla \frac{1}{r} \right) \cdot \hat{\mathbf{r}} dS
\end{align}

となり、場の微分  \nabla が領域の微分  \partial(意味は境界;この場合球面)になったみたいで良い感じある。
括弧の内側は、


\begin{align}
\nabla \left(\frac{1}{r} \right) = \nabla r \frac{d}{dr}\left( \frac{1}{r} \right) = -\hat{\mathbf{r}}\frac{1}{r^2}
\end{align}

なので、


\begin{align}
\iiint_V \Delta \left( \frac{1}{r} \right) dV = - \iint_{\partial V} \frac{1}{r^2} dS = - \frac{4\pi R^2}{R^2} = -4\pi
\end{align}

これが何を意味しているかというと、

  •  \begin{align} \Delta \left( \frac{1}{r} \right) \end{align} は、原点以外では  0
  •  \begin{align} \Delta \left( \frac{1}{r} \right) \end{align} を原点以外も含めて積分すると  -4\pi

これに基づいて、グラフを書くと、書けない。
代わりにと口で言うと、

  • 原点以外で  0
  • 原点では  -\infty
  • 原点を含む任意の空間で積分する良い感じに  -4\pi

さっきと言ってること殆ど変わらなかった。。。でも、こういう類いのをデルタ関数と言います。具体的には、


\begin{align}
\int \delta(x) dx = 1 \\
\int f(x)\delta(x) dx = f(0)
\end{align}

というような  \delta(x) で、(Kroneckerのデルタ  \delta_{ij}


\begin{align}
\sum_j f_j \delta_{ij} = f_i
\end{align}

の連続的な拡張になっている)それの3次元バージョン  \delta^3 (\mathbf{r}) を使って、


\begin{align}
\Delta \left( \frac{1}{r} \right) = -4\pi \delta^3 (\mathbf{r})
\end{align}

と書けます。